私はノルウェーのある港で木で建造された一隻の漁船をみつけた。海水につかる部分に使われている木は木製サッシに良くつかわれる欧州赤松と言う木です。
水に対してはあまり強い木ではないのですがつかりっぱはしで、しかも海水だから十分持つのだろうと思います。こんなことで私はある大胆な仮説をたててみました。「木製の窓、つまり、気密がとれて、しかも防犯上も安心な開口部、こんな窓を必要としたのはバイキングが最初ではないか、と。
彼らの使用した船も赤松で作られていたに違いない。などと、私の推測はますます広がっていくのです。そして、バイキングのことをかいた文章のなかに、「バイキングは海賊,交易、植民を繰り返す略奪経済を生業としていたのではなく、ノルウェーの考古学者であるヘイエルダールがのべたようにこの地においては農民であり漁民であっつた、特に手工業に秀でており、職人としての技量は同時代においては世界最高のレベルであった。」とあり、私は更にその確信を深めたのです。
実際、ノルウェーの内陸部にも世界遺産となる、木造の素晴らしい教会があり、その木材加工技術の高さには目を見張るものがあります。
ただし、本当のところ、ノルウェーにはそれほど多く木材があるわけではありません。「ノルウェーの森」という有名な本があるくらいで、なんとなく森林王国のような感じがしますが、実際のところ、有用な赤松材はスウェーデンやフィンランドから買っている状態でした。
実際、私の友人のノルウェーの窓屋さんは、スウェーデンの北部から仕入れていました。
ノルウェーという国は国土がほとんど大きな岩盤の上にあるといった国で大木の根っこを支えるだけの土質部分が浅いのです。
しかしながら、私にはノルウェーの、しかも、北の海岸の岩の上やフィヨルドの奥にひっそりとたたずむ小屋の窓に木製サッシの原型があるように思えてしまうのです。